増井博明の森林紀行エッセイ

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【森林紀行No.6 セネガル,マングローブ林調査編】 No.12

ジルンダ(Djirnda)村

 これからパイロットプロジェクトを行った村の状況を紹介したい。パイロットプロジェクトは100村以上の村の中から10村を選んで行ったが,最初にジルンダ(Djirnda)という村について記す。

  我々チームは,主にフンジュンにあるホテルを基地とし,そこでボートも保管してもらい,各村を訪問した。村で宿泊の必要があるときは,村の民家や集会場のようなところに泊めてもらった。ジルンダ村というのは,フンジュンからボートで1時間半?2時間くらい,1km?2km程の川幅を持つサルーム川の本流を,河口方面に下った場所にある。

 

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ジルンダ村周辺の地図

 

 

ジルンダ村周辺の航空写真.jpg

ジルンダ村周辺の航空写真

 

 

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ワークショップなどで用いたジルンダ村の見取り図

 

 

 

ジルンダ村で行った活動

 この村で行った活動は,1.リゾフォーラ(最も主要なマングローブ)の植林と2.エトマローズ(ニシン科の魚)の燻製改良かまどの導入だった。

 

 

何回も行ったワークショップ

 住民には,数えきれないくらいワークショップを行っていた。どのような活動を行ってもらうかを決めたり,その組織作りやモチベーションを上げたりするためである。もちろん住民の能力を向上させるということも当然含んだ活動だったのだ。

 

 

女性が強い村

 どちらかというと活動を引っ張っていたのは女性だった。エトマローズの燻製などは男性が行うのであるが,その活動を後ろから押していたのは女性だった。女性の中でもリーダーとなるのは,村長の婦人であり,ほとんどの女性が読み書きができない中で,その方は読み書きができるので,自然とリーダーとなるのだった。おそらくこの村以外の町で教育を受けたのだろうが,我々の言うこともすぐに理解するし,自らアイデアをいろいろ出し,知性を感じるような方だった。

 

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何回も行ったワークショップ

 

 

 

ジルンダのリゾフォーラの状態

 リゾフォーラの植林を行うのは,このサルームデルタではマングローブ林が減少していたためである。その原因は降雨量の減少によって河川水の塩分濃度が上がってマングローブが枯死したり,住民の伐採が過剰なことなどによるものだった。

  何と言ってもマングローブ林の保護活動をしているからにはマングローブの植林は行いたかった。調査の結果からジルンダ村で天然更新している場所のリゾフォーラを調査し,潮の満ち引きの高さや底質の土質など,どういった場所であれば,植林した場合に成功の可能性は高いかが分かった。また,住民達のモチベーションも高く,継続して植林を続けて行く可能性が高かったのだ。

 

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ジルンダ村で高く積まれたマングローブの薪材

 

 

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ジルンダ村で天然更新したリゾフォーラ

 

 

 

エトマローズの燻製改良かまどの導入

 サルームデルタでは、エトマローズを燻製加工した魚は,自家消費というよりもギニアなど近隣の国に売り,住民の収入源としていた。エトマローズを燻製するために,マングローブ材が薪として用いられ,大量に消費されていた。もちろん自然枯死した枯れ木を薪として利用していたが,その発生量よりもマングローブの薪材の需要量は多く,マングローブの生木を伐採することもあったため、燻製用の薪材の消費量を抑える必要があった。そのため,従来から用いられている燻製かまどの熱効率を改善することによって、 マングローブ薪材の消費量を抑え,また良質なエトマローズの燻製を作るため,改良かまどを導入したのである。

  従来の燻製かまどはブロックを積んで,コンクリートで固めたもので,幅1m×高さ1m×長さ10mくらいのものが多く,かまどの上に網をかけ,燻製にするときにはトタンをかけていたが,開放式であるため燻製にするよりも焼いているように見えたものである。これでは十分に燻製にならないし,熱効率も悪かったので,改良かまどは,上を塞ぎ横から魚を入れ,横蓋ができるようにし,かなり密閉度の高いかまどを作った。これにより,魚も肉厚で燻製度もたかく,薪消費量も少ないかまどができたのである。

 

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従来式のエトマローズの燻製かまど

 

 

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完成品。燻製度が低く,焼いたような感じである

 

 

 

生き延びるのが大変な世界

 あるとき,10才くらいの男の子が,マラリアで亡くなったということで村全体が喪に服し,調査ができないようなことがあった。我々も喪に服したが,マラリアかどうかはわからなかったが,乳幼児の死亡率はかなり高く,我々が調査している2000年前後では,5才までに生き延びられない子供が20%近くあるようなことが言われていた。現在は5%くらいのようである。

 

 

歓迎の踊り

 村を訪ねると,いつもではないが時々女性達が,激しい踊りを見せてくれた。大きなひょうたんの実をくりぬきパーカッションとしてたたいていたのだ。指には金属製の指輪をはめ,すごく大きな音がでるのだった。野外でも室内でも踊ってくれた。おばさんのみで,男は踊らない。踊りは激しく体を動かし,繊細さには欠けるものの野性味あふれるものだった。あるときあなたも踊れと言われて,男である私が踊ったら大うけだった。

 

ひょうたんの実を.jpg

ひょうたんの実をくりぬいた大きな太鼓。金属製の指輪でたたく

 

 

野外での激しい踊り.jpg

野外での激しい踊り

 

 

室内でも踊ってくれる.jpg

室内でも踊ってくれる

 

 

 

成功したリゾフォーラの植林

 リゾフォーラの植林は大成功だった。住民総出の日を作り,25cm間隔と50cm間隔と2つのタイプで植林してもらったが,今から思うと25cm間隔では手間が余計にかかるので50cm程度でよかったかもしれない。しかし,25cm間隔の方が早くうっ閉するので,良いと言えば良いのである。

 なにしろ密植の効果は素晴らしく,それまで1mや2m間隔で植林していた村を多数見ていたが,植林したのかどうかが目立たなく,住民の植林へのモチベーションが上がらなかった。しかし,密植することで,緑が目立つことで住民達は益々植林意欲が湧いたと言っていた。それに密植したおかげで,すぐに日蔭ができ,強烈な太陽光が水温を上げるので,成長が悪かったのを,日蔭を作ることで,水温がそれほど上がらず,常時水温が下がっているおかげで,成長も早くなったのだ。

  植林後2年した2006年に訪れた時は,樹高は1m以上にもなり,完全にうっ閉し,マングローブの森林になるのはまちがいなかった。底質(水底の土壌)もより粘土質に変化しており,カキをはじめ貝類も膨大に増えていた。

 

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2004年。植林3ヵ月後くらいの時

 

 

2004年。同上.jpg

同上

 

 

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2006年,植林後2年。完全にうっ閉している。土壌もより粘土質になった

 

 

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カキも取れるようになった

 

 

 

成功したエトマローズの改良かまど

 エトマローズの改良かまどもの導入も成功した。そもそも従来は開放式だったものを密閉式にしたおかげで,薪の消費量が格段に下がり,熱効率が良くなった。それにかまどの中にいれる金網のバスケットを作り,バスケットの中にも魚を縦に入れやすくし,1段だったのを2段にした。これでさらに薪の消費量を少なくすることができた。それに魚の品質が肉厚で非常によくなり,美味しくなった。これで益々売れるようになり,住民の収入が増えた。その他,煙がでないので服が汚れなくなったとか魚も清潔になったとか良いことづくめだった。

  その後どうなったか,プロジェクトが終えると元の木阿弥ということが多いので,エトマローズはずっと取れ続けているか,改良カマドは普及したか,マングローブの植林地もマングローブの森林になったか,また植林活動は続いているのか,ジルンダ村を訪ねてみたいものである。

 

金網のバスケット.jpg

金網のバスケットを作り,2段式にした

 

 

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上から入れていたものを横から入れるようにし,

密閉式にし燻製度が高く肉厚の燻製魚ができるようになった

 

 

 

 

つづく

 

 

 

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