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[増井 博明 森林紀行 番外編 地域探訪の小さな旅]No.14 惣岳山周辺山行記

森林紀行

 今年(2025(令和7年))5月21日(水)に以前の職場の友人とともに奥多摩の惣岳山周辺を回る山行を行った。惣岳山はこの友人と共にこの3月にも行ったが、その時は御岳駅から惣岳山の山頂まで往復した。今回は、川井駅から一般の登山者が少ない静かな道を惣岳山を回り、軍畑駅まで歩いた。

赤い線が今回歩いたルート(川井駅から軍畑駅まで)

偶然の出会い
 一緒に登った友人とは、青梅線と西武拝島線の終点である拝島駅で待ち合わせた。出会ってから、次に来た青梅線に乗り、川井駅を目指した。青梅線の前の方の車両が空いていたのでそこへ行き二人で座ったところ、既に座っていた隣の人が驚きの声を発した。何と隣に座っていたのは、以前の職場の別な後輩だった。ヤマちゃんという。この偶然の出会いには、お互いにビックリした。この後輩も以前は、山仲間だったのだ。私が40代半ばから50代、この後輩が20代半ばから30代にかけて良く一緒に山登りに行ったものだった。私は以前の職場を引退してから15年も経つので、この後輩とは、15年ほど会っていなかったので、3人ともアッと声を上げて驚いたのである。この後輩は、この日は仕事で青梅に向かうと言っていた。近々、還暦を迎えるとのことだった。皆、一律、年を取ったものである。私も流れる時間には抗うことができずに、自然のなりゆきで、後期高齢者に突入してしまったのだから。また、一緒に山を登ろうと言って後輩は青梅駅で降りて行った。我々はそのまま川井駅まで行った。乗る車両が1両づれていても、また1本でも前後した電車に乗っていたら会わなかったわけだから、何という偶然だったのだろう。

川井駅
 川井駅に着いたのは9時少し前くらいだった。この駅から眺める景色も良かった。駅から、多摩川が、涼し気に流れる清流と見えた。少し向こうには多摩川にかかる大きな奥多摩大橋も見える。

川井駅
川井駅前を流れる多摩川
奥多摩大橋、御岳山方面

登り始め
 しばらく景色を眺めてから駅裏の道を進み、小さな沢沿いを少し登り、尾根に取り付いた。まずは、標高差300mほど上にある東電の鉄塔を目指す。この尾根を上がっていけばそれに行きつく。きつい登りが続く。最初からヒノキの人工林だ。球果がついたヒノキだらけだ。幸い花粉はすべて飛び散り、花粉の季節は終わっている。ところが下層に生えている様々な植物が目につき、観察ばかりで、前には全然進まない。ヒカゲチョウのようなチョウも沢山飛んでいる。ずっと見ていると前に進まないので、目につく植物の名前を友人とともに口ずさみながら進む。

ヒノキの球果、裏面の葉の合わさり目は白くY字形
キンミズヒキ
アカソ
マユミ
ヒカゲチョウの仲間のようなチョウ
ヒノキ人工林

鉄塔に着く
 ゆっくりと登っていき、尾根上の東電の鉄塔に着く。かなりの傾斜の尾根上を直線的に登ってきたので、結構きつかった。体力の衰えはひどいものだ。やっぱり年寄りはもっと鍛えなくてはいきない。電線は北西-南東方向に走っている。標高は470mくらいだ。鉄塔は随分と大きく、高さは50mくらいはありそうだ。ここで小休止し、少し食べ物を取り、エネルギーを補給する。少し元気になる。

尾根上に建つ東電の鉄塔
同上

惣岳山の頂上付近の尾根を目指して登る
 鉄塔から惣岳山まで、あまり回り道もなく、直線的に登っていくが、624mのピークまでは、傾斜がきつかったが、それを過ぎると幾分傾斜が緩くなり、歩くのは楽になる。しかし、若い時には感じなかった息切れを感じる。加齢による衰えというよりも練習不足だ。鍛えるということで、明日から毎日長距離を歩こうと思ったりする。
 ところどころにシカが角を研いだ時の傷がもととなり、表皮が剥がれたヒノキも見られる。岩を見ると節理が入っており、堆積岩と思われた。ところどころに広葉樹林が残っており、優先樹種はコナラだ。しかし、ほとんどのコナラにカシノナガキクイムシの穴が見られ、これでは近い将来この辺りのコナラも相当な部分が枯れてしまうのではないかと予想された。
 尾根上には大きく立派に見える大きなモミの木が残っている。境界木として残していたものであろう。

相変わらずヒノキ人工林が続くがところどころに
広葉樹林も残っている。
若干残っている広葉樹林
シカの角とぎに使われたヒノキ
節理が入る石。堆積岩。
カシノナガキクイムシの被害を受けたコナラ
尾根上に残された大きなモミの木

惣岳山頂上付近の尾根に出る
 ようやく惣岳山の頂上付近の尾根に出る。ヒノキ人工林から急に視界が開けた。目の前には、伐採跡地の後の造林地が広がっている。遠方まで見渡せる。高水三山の他の二つの山、岩茸石山、高水山の山頂も見える。ここで遠方の景色を楽しみながら昼飯を食べる。コンビニで買ってきたおにぎりと昨日スーパーで買っておいたパン類だ。エネルギー補給のゼリー飲料なども飲む。しばらく休んで再び歩き始める。

惣岳山の頂上近くの尾根にでて伐採後の植林地を望む
同上

頂上を半周回る形で東の尾根に向かう
 頂上を半周回る形で歩いていく。ここもスギの造林地がある。5~10年程度たっているであろう。少し遠くに金属の足場のようなものが光っているのも見える。谷間の下の方に見える樹木の白い花はヤマボウシのように見えるが、近かずかないとはっきりわからない。途中、樹木にヒイロタケが生えている。マルバウツギも沢山咲いている。スギの造林地はシカよけネットが張られている。

アセビ
ヒイロタケ
マルバウツギ
高水山から軍畑へ向かう尾根
ハイキングコースの標識
ミズメ
惣岳山の山頂近くの道標
スギの植林地のシカよけネット

尾根近くで作業小屋作り
 尾根に至ると作業小屋のようなものを作っている若い職人達が3人ほどいた。一番若い職人は他の二人にどやしつけられながら作業をしている。これらの職人の世界か、あるいは山の中の孤立した世界なのか知らぬが、反論する自由はないようであった。パワハラか何かか知らぬが、理不尽な世界である。何か問題が起こらなければ良いが、見て見ぬふりをして通り過ぎる。
 我々は、沢井駅に向かう尾根には行かず、もう一つ北側の尾根で、軍畑に向かう尾根に向かう。しばらく歩くとあと一週間くらいで咲きそうなコアジサイが沢山ある。

シカよけネットの上の尾根上の道標
コアジサイ、あと一週間くらいで咲きそう
クロモジ
ヒノキの切り株、75~80年くらい
対岸の尾根。スギの人工林
谷。スギの人工林

 もっと下って行くともう咲いているコアジサイが沢山ある。ほんの少し標高が低かったり、日当たりが良かったりすると1週間くらい咲く速さがちがうようだ。ヤマツツジの赤い花も咲いている。ヤマツツジはもう終わりであろう。

コアジサイ 既に咲いているものもある
ヤマツツジ
スギの球果

別のスギを抱き込んで生長した珍しいスギ
 しばらく緩やかに下って行くと、コゴメウツギも咲いている。カンアオイもある。スギのやや湿った根元にある。面白いスギを見つけた。一本のスギが近くの別なスギを自分の中に巻き込み抱きしめるように生長してしまったものだ。マンリョウもやや湿気を感じるスギ林の下層として実をつけている。5月でも実をつけている。今は花の時期なので、秋に本格的に実を付けるのであろう。

コゴメウツギ
カンアオイ
一本のスギが他のスギを抱き込んで生長した
その根元
マンリョウ

物見山
 物見山480mという道標がある。その横に平溝尾根と書いてあるので、この降りている尾根は平溝尾根というのだろう。周りが森林なので、どこが物見山の山頂かはっきりしなかった。惣岳山の山頂付近から250mくらい降りたことになる。

物見山

ご神木のスギ
 しばらく降りるとしめ縄をまいたスギの木2本があった。ご神木なのであろう。

ご神木のスギ

自動カメラ
 そこから、しばらく降りると動物観察ようの自動カメラがスギに巻き付けてあった。ニホンシカの生息状況調査と書いてあるので、生息密度や植物への食害を調べているのであろう。また、すぐそばにJR古里線25号に至るという東電の標識があった。

自動カメラ
東電の標識

足がつる
 このあたりで、左足の足首より少し上の外側がつり始め弱った。そこで、少し休みマッサージをする。しかし、一向に治らない。友人が近所のおばさんに、「山に行くなら持って行きなさい。」と言われてもらってきた漢方薬の芍薬甘草湯を飲む。かなりの量の水も飲む。これが効いたかどうか、しばらくしてつるのが収まってきたので、歩き始める。30分ほど休んだ。歩き始めてもしばらく痛かったが徐々に収まり、そのうちに何ともなくなった。

東電のJR古里線24号の鉄塔
東電のJR古里線24号の鉄塔から
タツナミソウ
スギ人工林

東光寺
 それからしばらくスギ人工林を通って、ようやく東光寺に出た。お墓がある。東光寺の境内に降りて一休みする。このお寺の下が軍畑駅ですぐ近くだ。

東光寺のはなれの社
東光寺の大きなスギ
東光寺 本堂とはなれを結ぶ階段
東光寺
龍澤山(りゅうたくざん)東光寺

軍畑駅へ
 東光寺から軍畑駅まではすぐそばだ。一旦、青梅線の踏切を渡り、少し下ってから駅に向かって上に登れば、軍畑駅だ。駅には年配のおばさん三人組が電車待ちをしており、電車が来るまでしばらく山談義をし、帰路へついた。

軍畑駅側から踏切を挟み東光寺を見る



つづく

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