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【森林紀行No.1 11/18】「細かい問題の発生」

森林紀行

細かい問題の発生と石油開発

 調査地域内の小さな湖。静かな湖面をカヌーで渡る先住民.jpg

 調査地域内の小さな湖。静かな湖面をカヌーで渡る先住民

伐採した樹木の大きさを測る。.jpg

伐採した樹木の大きさを測る。

 

細かい問題

作業員がゴネる

 一人の作業員が数日働いた後にゴネだし、まだ、残業をしていなかったにもかかわらず「残業代をつけろ。」と言う。それに「土曜日働くなら2倍、日曜日働くなら3倍払え。」と言いだした。我々は、「基本的に、安全第一で極力残業しないようにしている。川の渡しなどで帰りが遅くなることがあるかもしれないが、実質的に労働時間は短い。それに雨で働けない日があったら休みにするから土日関係なく働く。日給はこの辺の相場よりも少し高く払っているので今のままの条件で働いてくれ。」と頼むと、「じゃあ働かない。」という。

 もう一度事務所でじっくり話し、「遅くなった場合の残業代は付ける。土、日は仕事の進行具合を見て極力休むようにするが、働かなければならないときは働いてもらう。土曜日は2倍、日曜日は3倍払う。」ということで我々が折れて彼の言うことを認めた。

 しかし、翌日になるとその作業員がまたゴネ出し、今使っているマチェーテ(南米のナタ、チームが貸している)をくれ、それに靴を買ってくれなければ働かないという。昨日我々が折れたのでゴネ得と思っているのだろう。「マチェーテは貸しているので仕事が終わったら返してもらう。我々の仕事は今後も続く。靴は自分で調達してくれ。いやなら別な人を雇うから、来なくていいよ。」と言ったら翌日から本当にこなくなってしまったので、少々驚いた。

 仕方がないので別の作業員を雇った。作業員の雇用についてはヒメネスとモリーナが率先してやってくれたので問題はなかった。

 

小切手が落ちない

 Banco Internacionalは現場の町ラゴ・アグリオで我々が泊まっているホテル「エル・コファン」の近隣にある。ある時私がサインした小切手の金が落ちないと作業員が言ってきた。漢字のサインを使っていて、急いで書いたので崩れた字で、銀行員には漢字は分からず、丁寧に書いた原本のサインと違って見えたのだ。仕方がないので銀行へ言って説明し、サインをもう一度してお金が下りた。それからサインは丁寧にするようになった。

 

毎日のパンク

 借りたレンタカーとMAGの車は毎日パンクする。仕事に行くと毎日2台とも4本のうち、1本は必ずパンクした。2台とも1本のタイヤがパンクし、予備のタイヤと取り換えてからその後にパンクすることはなかったのは幸いだった。2本パンクしたら走れなくなる。ただ、積んでいる予備のタイヤと交換するのに毎日時間がとられるのがもったいなかった。我々も業を煮やし、タイヤ10本全部買ってやるからと全部取り変えさせた。すると次の日から一切パンクしなくなり、仕事がはかどった。

 レンタカーとMAGの車なのでバカバカしかったがやはり仕事が進まないのでは仕方がない。多少の金を惜しまず思いきって変えて非常に良かった。

  

石油開発

 先述したが、この地域は1960年代に石油が発見され、1970年代に本格的な石油開発が進んだ。これにより石油開発のための道路が開設され、政府が入植政策を進めていたこともあるが、許可を持たないアンデス山脈中に住む貧しい農民が多数、この道路に沿って入植してしまい、今度は横道を作って森林を伐採し、農地に転換して行くのである。もともとは先住民しかいなかった土地に新たな入植者が入って来て先住民の土地が奪われていった。

 我々が調査を始めたこの年まで、この周辺の土地所有は誰のものともはっきりせず、あいまいであった。それをエクアドル政府は、この翌年国有林設定事業(日本の明治時代に行った官民有林区分のような事業)を始めるのであるが、我々日本の調査団がその境界設定のための測量をしていると入植者や先住民に誤解され、調査の反対運動にあい、調査は中断に追い込まれるのである。

  

石油開発の最先端

 ダユマ周辺は石油開発の最先端の場所である。この道路の最先端に小さなテントを張り、寝泊まりして、森林の大木を伐採していたのは黒人たちであった。よくまあこんな劣悪な場所に寝泊まりさせられているなあと思うほど大変そうであった。顔も険しく、あまりしゃべらないので親しくはなれなかったが、彼らは1本いくらで伐採を請け負い、伐採しているのであった。最初にテキサコの技術者が石油が出る場所を探査してあるのだろう。その方向に向かって道路が延びていく。

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石油開発のための道路が延びて行く。周辺の大木の樹高は30m~50m。

 

石油掘削地の整地

 もちろん道路は石油掘削のためで、油田がある方向へ延びていくのだが、道路の延び方をみるとアンデス山脈に沿って南北方向に走って行く。油田は麓に沿って南北方向に分布しているのだ。

 

 石油の採掘は次のように行っていた。まず、道路に近いところで、採掘井戸を作設するため周囲の森林を伐採する。ここも有用木を一本単位で、作業者に伐採を請け負わせている。

 次に石油汲み上げ用井戸の掘削のために整地する。そして周囲が伐採されたところで、伐採した木を敷きつめ固めその上に砂利を引いてさらに固めて行く。

採掘用井戸を作設するため伐採された場所.jpg

採掘用井戸を作設するため伐採された場所

木材を敷きつめ、その上に砂利をかけていく.jpg

木材を敷きつめ、その上に砂利をかけていく

 

井戸の作設

それができたら次に石油を採掘するための井戸を作設するのである。

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石油採掘の井戸

 

安定供給

 そして安定的に取れるようになると次のように自動的に石油が回収される簡易な井戸となるのである。

 石油を自動採掘中の井戸.jpg

石油を自動採掘中の井戸

 

 

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