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【森林紀行No.6 セネガル,マングローブ林調査編】 No.16

森林紀行

ソコンカキ組合

ソコンの位置

 ソコンカキ組合は文字通り,ソコンの町にある。ソコンに向かうには,我々が基地としていたフンジュンからは,車で東に向かい,パッシという比較的大きな町にでて,そこから南のトゥバクータ方面に向かう。ソコンは,パッシとトゥバクータとのちょうど中間くらいにあり,この周辺では比較的大きな町である。フンジュンから約1時間といったところである。

 

 

ソコンカキ組合で行った活動

 ここでは,主に水産関係の活動を行い,普及啓発や環境教育も行った。この町ではマングローブカキの採取が盛んなため,それらの関係者によるカキ資源を保護するための漁期の設定などの合意形成のため天然カキ資源管理手法を導入したり,カキの養殖を試みたり,またカキ採取のために手足を保護する地下足袋や手袋の作製を行った。また普及啓発・環境教育では組合による文化・スポーツ活動と連携した啓発活動を行った。

 

 

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ソコン周辺の地図

 

 

 

ソコン周辺の航空写真_1806.jpg

 

ソコン周辺の航空写真

 

 

 

天然マングローブカキの資源管理手法の導入

 マングローブカキの取り過ぎを防ぎ,持続的に利用しようというのが目的である。マングローブカキはリゾフォーラの足に付き,マングローブの生態系へ大きく依存し生息している水産資源である。マングローブカキを採取し,販売することが,即現金収入に繋がるため,採取圧力が年々と増し,漁場が村から遠くなったり,採取されるカキの寸法が小型化してきていた。

  これまでも雨期には,カキの採取を休んだり,休漁区を設けたということだったが,そうした取り組みは,それまで村単位で行われてきたため,他の村から採取者が入り込み,休漁期や休漁区を破って採取し,村単位での規制はうまく機能しない場合が多かった。そこで,ソコンカキ組合を構成する4村全てを対象として,全村が規則を守るという合意形成によって,カキ資源を守るという管理手法の導入を試みたのである。その4村とはメディナサンガコ, バンブガールエルハジ, サンディコリ,スクータという名の村だった。

 

 

 

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住民ワークショップ

 

 

 

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住民ワークショップ

 

 

活動計画

 いくつかの管理対象とする漁場を選択し,休漁と決めた漁場では,カキが十分に成育するために必要な1年半の間を禁漁期とすることとした。その他の漁場は,輪番制で禁漁としていくシステムを構築していく計画を立てた。

  そのため管理対象となる漁場を利用する全ての人びとが参加者するカキ資源会議を開催し,会議ではカキ資源の利用と管理に関する共通のコンセンサスを築く場とすることとした。また,カキ採取時の操業日誌の記帳を励行し,効果的な資源管理に活用することを計画した。

 

 

活動組織の確立

 すでに機能していた組合執行部を統括組織として,その下に天然カキ管理委員会を設け,組合員,非組合員を問わず 関係者の連絡,調整体制を整えた。

 

 

活動結果

 休漁漁場を法令化する手続きは煩雑で,住民だけで進めていくのは困難だったのでUICN(世界自然保護連合)の指導の下で行い,県知事も署名し,公的にも正式に認められるものとなった。それでも休漁開始当初は,休漁漁場でもカキを採取する違反の採取者が少数は認められた。しかし,その後,休漁を示す看板を各漁場に立てて以降,違反採取者は見られなくなった。

  しかし,カキ組合員による操業日誌は2村で記載されたものの,他の2村では実行できなかった。やはり物事をきちんと記録していくにはまだ難しい点があった。また,今後休漁漁場が転換する時点で,UICNが行った県知事への届け出をソコンカキ組合が自立的にできるかどうか,ずっと継続していけるかがこのシステムがこの地で根付くかどうかが課題として残った。

 

 

天然マングローブカキの養殖普及

 調査地域に含まれるのであるが,サルームデルタのやや北にあり,プティットコートと呼ばれる海岸線の町,ジョアルという町では天然マングローブカキの減少により,天然カキ採取から養殖カキへ生産への転換が進んでいた。

  一方,サルームデルタではそれまで天然マングローブカキが豊富にあったため,本格的に養殖へ取り組んでいなかった。しかし,サルームデルタでもカキ漁場が村から遠くなり,寸法が小さくなる傾向があったため,上で述べた資源管理方法とともに,住民が手軽にできるカキ養殖の普及が必要だった。そのため,カキ養殖を試みたのである。

 

 

活動計画

 上述したようにソコンカキ組合の4村を対象に,ギルランド(垂らした糸にカキを付着させる方法)とスレート板を用いた天然採苗と幼貝の地蒔き養殖試験を行うことした。養殖場では,一部を住民に開放し,住民自らがカキ養殖を行う場を提供し,我々の仲間であるカキ養殖専門家による定期的なコンサルティングの機会を提供することとした。

 

 

活動の経緯

 最初の年は,バンブガールエルハジ村とメディナサンガコ村に簡易な地蒔き養殖場を設置し,UICNの担当者とカキ組合担当者が地蒔き幼貝の採取と計測をした。計測の結果,地蒔き後20日で4?5mmの成長がみられ,順調な生育状況が確認された。

 

 

 

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地撒き養殖場の遠景

 

 

 

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地撒き養殖場

 

 

 

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地撒き養殖

 

 

 また,1年目にバンブガールエルハジ村とメディナサンガコ村には,ギルランドとスレート板による天然採苗も行った。

 2 年目はサンディコリ村とスクータ村に簡易養殖場を設置し,全4村でギルランドとスレート板による天然採苗を行った。

  天然採苗では,ギルランドのカキ殻1枚あたり平均5個の稚カキが付着し,1.5?2ヵ月が経過した段階で2?3cmに成長した。スレート板には約200個/枚の稚カキが付着し,1.5?2ヵ月経過の段階で3?5cmに成長していた。

 

 

 

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ギルランドによる養殖

 

 

 

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ギルランドによる養殖

 

 

 

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スレート板による養殖

 

 

 

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スレート板による養殖

 

 

 

養殖試験の結果

 次のような結果から,ギルランドによる養殖は,この地で成功する可能性が高いと判明した。

 

・ギルランドで採取された稚貝(メディナサンガコ約5,000貝,バンブガールエルハジ約7,000貝)は,その後比較的順調に生育した。

・スレート板で採取された稚貝(メディナサンガコ約4,800貝,バンブガールエルハジ約6,000貝)は,その後,熱の影響や食害のため多くが死滅した。

・ギルランドでは地盤から15?65cmの高さで稚貝の付着と成長が良い。

・屋根による日陰効果は高い。日陰のない場所では死亡率が高くなる。

・地蒔き養殖場は水流の影響が少ない場所が適地となる。

・地蒔きする前に,地盤に貝殻を敷くなど基礎を固める必要がある。

・食害の影響は場所により異なる。

 

 

課題

 地蒔き,ギルランド,スレート板の3方法では,ギルランドを用いた垂下式養殖がもっとも成功した。住民もその点で自信を深め,垂下式養殖は普及の段階に入ったように思われた。住民自身の手により,ギルランドを用いた垂下式養殖をさらに押し進め,サルームデ ルタ内の他地域へも普及する必要があるというのが課題として残った。

 

 

類採取用防具の自給(地下足袋・手袋製作)

 ムンデ村で行ったのと同様な方法でソコンカキ組合でも地下足袋,手袋を作製した。ソコンカキ組合では組合執行部がすべての活動の統括し,地下足袋・手袋の製作は組合内で製作責任者が任命され,この責任者が製作技術の普及を実施した。 

 1年目に4回,2年目に4回の製作講習会を実施し,1年目は講習会の対象者が組合のメンバーだけに限定された反省から,2 年目の講習会 は組合員,非組合員を問わず参加者を募った。 

  ソコンカキ組合では,カキ漁場の多くで泥が深いため,かかとがはずれやすいという問題点があった。そのため足袋底部の補強や足袋底材料の転換,紐の締結方法の改善などを進める必要性が生じたが,その後は住民の自主的な活動にゆだねた形となった。

 

 

スポーツ・文化活動と連携した啓発活動

 ソコンカキ組合では,民俗芸能公演時やスポーツイベントの表彰式などで,我々のこの活動を紹介し,マングローブやカキ資源の重要性を訴えることとした。

  一番の活動は,組合を構成する4村の合同サッカー大会時であり,この時に啓発活動を併せて行った。そこでは組合と各村の若者青年団との連携が強化され,サッカー会場となったサンディコリ村では,若者が中心となりリゾフォーラ植林も実施し,マングローブを保護するという住民の意識も高まった。サンディコリ村では,劇団結成の希望はあったが結成までには至らなかった。

 

 

 

つづく

 

 

 

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