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【森林紀行No.6 セネガル,マングローブ林調査編】 No.19

森林紀行

カマタンバンバラ(Kamatan Banbara)村

村の位置や活動

 カマタンバンバラ村は基地としていたフンジュンの町から東に向かって、車で40分くらいの距離にあり、サルーム川の上流域に位置している。この辺りの塩分濃度は、8%程度と相当に高く、かつては存在していたマングローブも全滅してしまった地域でもある。しかし、エビ漁を始めとした漁業は盛んであり、水産分野のライフジャケットを作製する活動を行うこととなった。

 

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カマタンバンバラ村周辺の航空写真

 

 

ライフジャケットの製作

 この周辺は、サルームデルタの最上流部に近い内陸部ではあるが、国が定めたエビの禁漁期、それは主に乾期であったが、その禁漁期を守る者は少なく、違反操業者が絶えなかった。その原因は、何と言っても水産物は住民の食料源であり、もうひとつにこの地域の乾期には生業活動がないという現実もあった。

  そしてエビ漁は、夜中に水深が深い川に入って行わなければならず、海難事故が絶えなかったため、エビ漁による海難事故防止から村人のライフジャケットに対するニーズが高かったのである。

 

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ワークショップ

 

 

 そのため乾期にライフジャケットを製作することで、村に生業を起こし、エビの漁期を守り、さらにライフジャケットの販売収入の一部を環境基金とし積み立て、その資金をマングローブ植林や村落林造成に利用し、マングローブ林の保全と復旧に寄与することを目的として、ライフジャケットの生産に取り組んだのであった。

 

 

 

活動計画

 カマタンバンバラ村では1年間に100着、2年間に200着のライフジャケットを生産し、販売する計画とした。

 

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ワークショップ

 

 

 

活動の実施

 カマタンバンバラ村では漁民、女性グループ、青年の代表や村で裁縫活動をしているテーラーを構成メンバーとする管理委員会を設置し、ライフジャケットの製作と販売を行うこととした。

 

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住民への聞き込み

 

 

 

活動の経緯

 内陸部の村には通常数人のテーラーが在住し、村人が持参する布地を客の注文に応じて仕立てていた。カマタンバンバラ村では洋裁の技術を持つテーラーをライフジャケット生産グループとして結成し、村のテーラーの自前のミシンとパイロット・プロジェクトで投入したミシンにより若者を対象にライフジャケットの生産技術の訓練を進めた。

 

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テーラーがライフジャケットを作製

 

 

 ライフジャケットの材料は、原則地元での供給を目指したが、ダカール以外では入手が困難なものもあり、ダカールとプロジェクト対象村間の資材入手ルートを確保し、内陸地域を中心にライフジャケットの販売網の構築を図った。

 1年目には、カマタンバンバラ村で100着のライフジャケットが生産され、1着5,000Fcfa(約千円) で91着が販売された。そのうち62着分の代金が回収され、29着分が売掛金として未回収だった。残りの9着は在庫となっていた。売掛金が回収できなかったのは、エビ漁が不調に終わったことで、エビ漁民に掛け売りした代金が回収できなかったからである。

 

  2年目は、発泡スチロールの浮材を柔軟性のある浮材に転換し、改良タイプのライフジャケットを製作販売した。この改良は住民自身の発案による。カマタンバムバラ村ではプロジェクトが終了する時点で50着が生産され、その後さらに50着を生産する予定だった。販売価格は1着7,000Fcfa(約千二百円)であり、その時までに7着が販売されていた。

 

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製作されたライフジャケット(最初のタイプ)

 

 

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最初は発砲スチロールだったが、後に柔軟性のあるものに改良

 

 

 

活動結果

 住民自身が浮材を発砲スチロールから柔軟性のあるものに改良したことにより、浮力不足と浮材が破損しやすいという問題点が解消された。それまで、製品の品質に自信を持って販売できないと語っていた住民も、この時の改良した製品に自信を深めていた。ユーザーであるエビ漁民のライフジャケットの品質に対する評価も上々で、輸入品と比べて遜色がないと語っていた。確かに良いものができたと我々プロジェクトチームも驚くほどであったが、プロジェクトの終了後の活動は分かっていない。

 

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プールでの浮力試験

 

 

 

つづく

 

 

 

9月の駒ヶ岳

社窓


9月の駒ヶ岳

9月4日には台風21号が非常に強い勢力のまま日本に上陸し、近畿地方を中心に大きな被害をもたらしました。

また、6日には北海道で胆振地方中東部を震源とした最大震度7の地震に見舞われ、震源地の胆振地方はもとより、

北海道全域が停電に見舞われるなど大きな被害となっています。

被害に見舞われた皆様に心よりお見舞い申しあげるとともに、早期の復旧を願っております。

 

くしくも、9月1日は防災の日ということもあり、地区の防災訓練に参加されたされた方も多いかと思います。

日頃の備えについて改めて見直さなければと強く感じているところです。

【森林紀行No.6 セネガル,マングローブ林調査編】 No.18

森林紀行

ガーゲシェリフ(Gague Cherif)村

ガーゲシェリフ村の位置や活動

 ガーゲシェリフ村は、基地としていたフンジュンから近く、西に向かって車で20分くらいの位置にある。ガーゲシェリフ村は最初、非常に熱心でやる気のある村のように思えた。それにこの村は我々が援助に入る以前に、様々な活動の現地での仕事を委託したWAMME(西アフリカ海洋協会)もいろいろ関わっており、プロジェクトを行えば成功する可能性が高いと思っていた。

 

 

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ガーゲシェリフ村の水路

 

 

 実際に住民は良くやったのであるが、住民総会で選ばれた最初の執行部は、1年も経たないうちに総辞職させられ、途中で新たな執行部が立ち上がったのには驚いた。村内に対立するグループがあり、それは外部から見ていただけでは分からなったが、いろいろな活動を行っているうちに利害関係が生じるようになって表面化してきた問題だった。

 

 

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ガーゲシェリフ村でのワークショップ

 

 

 

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WAAMEの職員のアミ。細身であるが,手足が長く頭が小さく体のバランス

が良い。身長は私より少し低いが,手を伸ばすと私よりもずっと上に届く

 

 

 しかし、そのことがこのプロジェクトの活動に影響することはなく、執行部が変わってもプロジェクトは変わらすに動いた。ガーゲシェリフ村で行った活動は、アヴィセニアの植林、柴漬け漁、啓発活動だった。

 

ガーゲシェリフ村の航空写真.jpg

ガーゲシェリフ村の航空写真

 

 

ワークショップで使ったガーゲシェリフ村の見取り図.jpg

ワークショップで使ったガーゲシェリフ村の見取り図

 

 

アヴィセニアの植林

 アヴィセニアの植林は,ダシラメセレール村でも記したが,サルームデルタではマングローブ林の減少が続いており、その原因は降雨量減少による塩分濃度の上昇、住民による伐採、土砂の堆積、道路の建設などだった。何と言っても塩分濃度の上昇が最大の要因だ。

  マングローブの植林はリゾフォーラとアヴィセニアと2種類行うこととしていたが,塩分濃度への抵抗性が多少でも高いアヴィセニアは,より塩分濃度の高い場所を中心に行うことにしたのである。ガーゲシェリフ村の塩分濃度は7%程度あったからもともと難しい地域でもあった。6%を超えると定着してもほとんど成長しないことが観察から分かっていたが,ガーゲシェリフ村の住民達が熱心にアヴィセニアの植林を希望したので選定することとなったのである。管理委員会の中にアヴィセニア植林の担当者が任命された。

 

 

活動の経緯

 ガーゲシェリフ村の植栽地は,第1年目の村民総会で、ヤーイという地区に設けることとなった。

 

植林地を選定.jpg

植林地を選定

 

 

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左二人がWAMMEの職員。右はこの地区の森林局職員

 

 

 苗畑は植栽地の近くに100m2の区画を用意し、これに木枠を3個設け、1つの木枠内で2,000本、合計6,000本の苗を生産することとした。魚による食害を防ぐために周囲を網で囲み、水温の上昇を防ぐために上部に竹で編んだすのこ状のもので日覆を設けた。苗畑用の資材の搬入は当初の作業計画から多少遅れたが、8月下旬から9月初旬に苗畑を設置し、ポットへ用土を詰めた。

  第1年目は2003年であったが,この年の雨期は雨が多く、天然に生えているアヴィセニアの樹木から雨によって多くの種子が落下して流されてしまった。そしてこの周囲にはもともとアヴィセニア林が少なかったため近隣から種子を採取できなかった。このため種子採取にはWAAMEの担当者と管理委員会のメンバーが10月下旬に2,500個、11月初旬に3,500個の種子をジョガン村周辺から採取し、水につけ皮を剥ぐなど前処理を行った後にポットへ播種した。ところが,採取時期が遅れたことと種子が良好でなかったためほとんど発芽せず、うまくいかなかった。

 そこで2年目は計画通りに2004年8月中旬に約6,000種子を採取し、ポットに播種した。

 

ポット苗用の木枠.jpg

ポット苗用の木枠

 

 

日覆いをした苗畑.jpg

日覆いをした苗畑

 

 

日覆い_同上.jpg

同上

 

 

活動結果

 1年目に植林した苗木で生き残ったのはたった43本だった。この周囲に2年目の苗木を植栽したが,その時点でプロジェクトが終了してしまい,その後は不明であるが、塩分濃度が高過ぎ、また維持管理が住民だけでは難しく,ほとんど残存していないと思われる。

 

 

結論

 失敗したのは残念だった。おそらく活着しても成長しないと思われた。それでも1mくらいまで成長すれば、次に述べる柴漬の代わりにはなると思われた。ガーゲシェリフ村のように乾期の塩分濃度が7%程度になる場所はアヴィセニアにしても生育条件としては決して良いとはいえない。

  しかし、アヴィセニアの植林にあたっては、アヴィセニアの天然木がある地域を選定するので、今後の植林にあたっては50cm×50cmの密植、場合によってはそれより密な25cm×25cmの密植により生存木を確保することが最も良い方法と他の地区での植林から分かったことである。それは一度基盤ができてしまえば、その後は、天然更新によってアヴィセニアが増殖していくことが期待できるからであった。

 

 

柴漬け(漁)の導入

 マングローブが消失したサルームデルタの内陸部では、植物性有機物の供給が乏しく、日陰がないため水温の上昇が激しいことが分った。これは水生生物にとって厳しい環境となり、漁場ではマングローブの復旧が求められたのである。

 とにかく、この水域で水産資源の持続的利用をしていくには、漁場環境を改善しなければならなかった。そこで考えたのが柴漬け漁である。柴漬け漁は、木枝を浅瀬に投入することで魚の住処とし、そこを拠り所とした魚を捉える短期的な漁場整備であり、定期的にそこから水産物を収穫することができる。日本では奈良時代以前くらいから行われていたと推定され、今でも行われている漁法である。

  ここでは、マングローブ植林によりマングローブ林が成立するまで柴漬けによりマングローブ林の代替とすることを狙ったのである。マングローブの植林は、マングローブ林が成長することで、植物性有機物と日陰を水産資源に提供する長期的な漁場整備である。ここでは柴漬けの導入は、マングローブと水産資源の密接な関係を住民が再認識できる場を提供することも目的としたのである。

 

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漁場を囲っての漁

 

 

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漬けた柴まで泳いでいく

 

 

活動計画

 浅瀬に錘をつけた木枝を投入する。一定期間の間、柴を漬けた周辺での漁獲を禁じ、水産資源の涵養を図ることとした。特に雨期は種々の水産資源が再生産を行う時期なので雨期は、禁漁とした。また、漁業者がかってに入り込まないよう柵で水域を囲い込むことにした。管理委員会は乾期になったら禁漁を解き、その間は定期的に漁を行う。このとき、特定寸法以上の魚は放し、幼稚魚を保護し、将来のストックを確保することとした。

 

 

活動の経緯

 活動は柴漬けユニットの製作、沈設、モニタリングを行うことにした。2003年7月の村民総会で、沈設場所はヤーイ(集落北側の水路、アヴィセニア植林地横)とサンゲ(集落 南側の水路、集落から徒歩40分)に決定された。8月にWAAME担当者と村民がサンゲで製作と沈設を行い、その後ヤーイでの製作と沈設を行った。

  メンテナンスのためプロジェクトの実施中、4回にわたり設置された柴漬けユニットに新たな柴を追加投入した。集まってきた成魚がどの程度が、効果の程度を数か月後に調査した。

 

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試験調査で捉えた魚

 

 

活動の結果

 集まってきた成魚は、柴漬けサイトではティラピア、ボラ、ヒラアジが漁獲され、マングローブサイトではティラピアとボラが、柴漬けもマングローブもないサイトではティラピア、ボラ、ヒイラギが漁獲された。サンゲでの漁獲重量は、柴漬けサイトで3.5kg、マングローブサイトで3.9kg、柴漬けもマングローブもないサイトで2.6kgだった。柴漬けサイトとマングローブサイトが、柴漬けもマングローブもないサイトに比べ、いくぶん漁獲量が多いという結果が得られた。

 幼魚の育成効果試験の結果では、ヤーイでは3.6?6.0cmのティラピア32尾と6.5?7cmのエビ2尾が漁獲された。サンゲでは、6.5?8.5cmのヒイラギ18尾と7.0?8.5cmのエトマローズ6尾が漁獲された。

 この実証試験では、柴漬けサイトとマングローブサイトの有効性が幾分認められ、住民のモニタリングによれば、他の水域で魚がみられなくなった場合でも、柴漬けサイトには年間を通して大きな魚が集まっているという。

 特にサンゲでは寸法の大きなカープ、ボラ、ティラピアがみられ数量も多い。ヤーイではティラピアの幼稚魚が数多くみられた。ヤーイで成魚試験を行った時にも、数多くの幼魚が網具を抜けていったのを視認したし、マウスブリーディング中のティラピア親魚の漁獲を確認した。これらのことから、柴漬けユニットの幼稚魚育成効果は非常に大きいことが明らかとなった。

 

  しかし、住民間で柴漬け漁の効果が大きいことが広まったためかこの村以外の外部の漁民が柴漬けサイトに連日やって来て漁獲操業することとなってしまった。柴漬けサイトがガーゲシェリフの集落から比較的遠隔地にあることも災いしていた。柴漬けは魚類を集める効果が直ぐにみられるため、マングローブ植林を行わずに、柴漬けのみが一人歩きする可能性が強く、他村民の漁獲操業を規制できないためマングローブ保全という観点からは逆効果となるため、ここで柴漬け漁は中止した。

 

 

結論

 上述したように柴漬けはマングローブ林と同様に水産資源の再生産を行う効果があることが判明し、魚類を集める効果は十分であるが、これを行うために地上の木の枝葉を多く必要とすることや他村民の漁獲行為を防ぐことが困難で、マングローブ林が復旧されずに地上の木の劣化と水産資源の減少をまねく恐れからここでの導入は中止とあいなった。

 

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WAMEが設置したプロジェクトの看板

 

 

 

つづく

 

 

 

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