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【森林紀行No.7 アラカルト編】 No.9_コロンビア

森林紀行

コロンビアのアンデス山脈は崩壊地だらけ

 アンデス山脈に対し皆さんはどのようなイメージをお持ちであろうか?カリブ海のベネゼエラからコロンビア,エクアドル,ペルー,ボリビアを経てチリ,アルゼンチンに至るまで総距離約8,000Kmと南米の西側に壁を作る超巨大山脈。コンドルが飛び,急峻崖谷な深山幽谷と夢に見ていたアンデスに1989年?92年にかけてのコロンビアでの仕事でついに行くことができた。

 最初に見たアンデスは,「エッ。何。木がないじゃん。」である。標高3,000m前後での調査であったが,山麓から山頂まで一面牧場に転換され,森林がないのである。よく観察すれば谷間にはかなり残っていて,斜面や尾根上では場所によっては固まって森林がある場所もある。しかし,多くは島状に点在しているのみという感じだった。唖然とした。それまで,パラグアイのラプラタ川上流,エクアドルのアマゾン川周辺の大森林破壊を見てきたにしても,それに勝るとの劣らない森林破壊に思えた。アンデスの尾根上は中央保存林として日本の保安林のような規制はかかっているものの,土地所有は民有なので,規制は全く効かないのだった。

 

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山頂付近まではげ山のコロンビアアンデス

 

 

 調査地は,マニサレスいうカルダス州の州都からネイラ,マルランダ,ペンシルバニアなどという町の周辺だった。ペンシルバニアの町名はまるでアメリカであるが,小さな町だった。マニサレスから遠く,遠くと言っても直線距離では20kmくらいだったが,くねくねとし,アップダウンの激しいアンデスの道では車でマニサレスからペンシルバニアまで5時間近くもかかった。その間に見る景色がそのようだった。牛もころげ落ちるという急斜面。牛が斜面を平行に歩くことにより表層土壌が写真のようにずれ落ちて行く。

 

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牛が斜面に平行に歩くので,土壌がずれ落ちていく。

右下や遠くの斜面に崩壊地も見える。

 

 

 崩壊地は観察では分からなかったが,航空写真を判読すると崩壊跡地がはっきりとわかるのだった。崩壊地の数を判読したところ,平均で20haの中で100個あった。大規模なものは少なく10m程度の表層崩壊である。1haあたりの崩壊数は5で,haあたり3個以上の崩壊が発生していれば崩壊多発地と言われており,このアンデスは超崩壊多発地である。しかし,降雨が多く,すぐに緑に覆われ一面牧草地のように見え崩壊地は隠れてしまうのだった。

 

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道路の作設も崩壊原因の一つ

 

 

 谷間の天然林は雲霧林だったが,最大樹高は20m程度で,思ったよりは大きくなかった。しかし,多くの残存木には沢山の着生ランがあり,強い湿気を感じた。幸いなことにこの地は赤道に近く,無風帯なのである。標高が3,000mもあっても風が強く吹かないのは不思議な体験だった。もし,台風があれば崩壊はさらに進み,人間が住めるような場所ではなくなっていたであろう。人間の手が加わる前には超巨大な天然林が広がっていたに違いないと昔に思いを馳せながら,崩壊地対策として植生回復方法を考えていた。

 

 

 

桜満開

社窓


桜満開

会社の前にある公園の桜が満開となりました。

4月10日には季節外れの大雪となりましたが、

今年は概ね平年並みの満開となりました。

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【森林紀行No.7 アラカルト編】 No.8_モロッコ

森林紀行

モロッコのアトラス山脈の森林

 アトラス山脈は雄大である。最高標高はトゥブカル山の4,167m。乾燥の影響が強く高標高の山地には樹木がない。地層がはっきりと見え,場所により褶曲地形も分かり,プレートが衝突してアトラス山脈が形成されたということが良くわかる。ここが昔,海だったということもアンモナイトやオウム貝,三葉虫の化石が発掘されることが証明している。私も山中で大きなアンモナイトの化石らしきものを発見したが持ち返れるはずもなく,それは記憶の中に残っているだけである。モロッコには,1992年?1994年,2005年にいずれも森林の計画作りで行ったものである。

 山麓は,かつては樹木で覆われ緑が多かったと思われるが,今は地肌がでた土地が多く,荒廃した風景に見える。これはヒツジとヤギの放牧により草木が食べられ,特にヤギは根まで食べてしまうこと,それに薪炭用に森林を伐採し過ぎ,そのペースが,自然が森林を回復させるペースよりも早く,その気候といえば,年間400?600mmと雨が少なくそれも冬に雨が降る地中海性気候だからである。

  ここにはシェーンヴェール(緑のカシ)という優占種がある。これは成長が遅く材が堅いので炭にした場合,日本の備長炭のように良い炭となり,多くの家庭で使われている。

 

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シェーンベールで作られた炭

 

 

 モロッコ料理のタジンにも沢山使われていて,特にマラケッシュからアトラス山脈へ向かうウーリカ谷で食べたタジンの美味しさは思い出すと今でも舌鼓を打ってしまうほどである。このシェーンベールが南向斜面では成長が悪く,ほとんどが疎林であるが,北向き斜面では10mほどの樹高まで成長し,密林となるのである。

 

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シェーンベールの密林

(乾燥地のため、これほどの密度がある森林は少ない)

 

 

 モロッコも北半球に位置していて調査地は約北緯32°で鹿児島と同じくらいの位置にあったが,晴れの日が多く,日射が非常に強い。この強い日射が南向き斜面には角度からしてもより直角に近い角度であたるので、地面は乾燥しやすく樹木が成長しにくいのである。樹木の成長のためには、ここでは光と温度よりも湿気や水分がより重要な要素になっているということがわかる。因みに日本でもスギの成長を見た場合,一般に南向き斜面よりも北向き斜面の方が,成長が良いのである。

 

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頂上付近に雪をいだくアトラス山脈

 

 

 その他,トゥーヤといってコノテガシワのような葉をした木やコルクガシなどもある。マツではアレッポマツの成長がよい。

 

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アレッポマツの人工林

 

 

 奥地にはたまに大きなアトラススギがある。これは日本のヒマラヤスギとそっくりで,樹高20m,胸高直径が2mの大きなものもみた。昔,このような場所ではアトラススギだらけだったのだろうが,今はほとんど消滅してしまった。森林の過伐が土砂流出など環境悪化の悪循環を起こしているのに対し,昔からオリーブやユーカリ,マツなどが多く植林されてきたが,依然森林の荒廃が続いているのがアトラス山脈の森林である。

 

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オリーブやアーモンドの植林地

 

つづく

 

 

 

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