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【森林紀行No.3 ブルキナ・ファソ編】 No.12
様々な産物(2)(サバ・セネガレンシス、ハチミツ、バオバブ)
サバ・セネガレンシス(Saba senegalensis)
サバ・セネガレンシスはつる性で、ほふく性の低木であり、その果実から作るジュースは甘酸っぱくてとてもおいしい。このジュースの生産販売により、住民の生活向上に貢献できるのでないかとプロジェクトではこのジュースの生産販売の研修を森林管理住民組織に行っていた。プロジェクトが発行したニュースレター「コモエの森からの恋文(Vol.6、2009年10月)号」に書かれた記事を抜粋要約し、サバ・セネがレンシスの木を紹介する。
ウェンガ村のサバ・セネガレンシスの花
記事【サバ・セネガレンシスは、ブルキナ・ファソの主要言語の1 つであるジュラ語では「ザバ」と呼ばれている木本性の蔓植物で、実を食用とする。シアバターの木(Vitellaria paradoxa)やネレの木(Parkia biglobosa)、に次いで、バオバブ(Adansonia digitata)と並び、このサバ・セネガレンシスは、地域で利用頻度が非常に高い非木材林産物の1つである。
直径5?7cmの丸形か楕円形の実が、雨期が始まろうという5月か6月頃から成熟する。始めは緑色をしているが、成熟するにつれ黄色から淡いオレンジ色にまでなる。これが食べ頃なのだが、ここまで待っていると、他の誰かに取られてしまう恐れがあるため、一番おいしい成熟したタイミングで実を取るのは、苦労する。この実を食べる時は、実を両手で挟み込み力を加えて割る。かなりの力がいる。そして、黄色い果肉部分を食用とする。味は甘酸っぱい爽やかな味がする。ビタミンCを豊富に含んでいる(48mg/100g)。収穫時期には、街の市場にもこの実がマンゴーの横に並んでいたりもする。また、この果肉からジュースを作り、それを小さなビニール袋に入れて売り歩く女性の姿も目にする。その商業的価値はシアバターやネレほどではないが、女性の収入源の1 つとなっている。バンフォラには、このサバ・セネガレンシスのジュースを商品化しようとしているBomba Technoという会社がある。
本プロジェクトでは、森林管理技術研修の一環として、Bomba Techno社と協力しつつ、サバ・セネガレンシス活用技術研修を住民森林管理組織向けに実施する。これにより住民組織は、サバ・セネガレンシスの適正な加工技術を習得し、品質の良いジュース原料を生産出来るようになる。この原料をBomba Techno社が買い上げる。住民組織としては、安定した売り先を確保出来るし、Bomba Techno社としても、自らの技術指導による確かな原料の仕入先を作ることが出来る。住民組織は、自分達でこの製品を売ることも出来る。キーワードは品質である。適正な技術と、衛生にも配慮して生産することにより、高品質の原料供給を住民管理組織が実現し、森林管理にも貢献することを目指している。】
私が参加した時点ではこの研修が行われていて、ブヌナ村などはサバ・セネガレンシスジュースを製造、販売しており、このジュースを飲んだ。傷まないよう砂糖を大量に入れて濃縮ジュースとなっているため、水で割って飲んだが、甘酸っぱくとても美味しいと思った。それ以後毎日の常飲のジュースとなった。シロデリヤン(Sirop de lianes :つる植物飲料)として売られており、まさにシロップである。
町の小売店で売られているブヌナ村製造のサバジュース
ハチミツ
プロジェクトでは、ハチミツ生産も指導しており、ハチミツ生産についてプロジェクトが発行したニュースレター「コモエの森からの恋文(Vol.2、2008年7月)号」に書かれた記事を抜粋要約し、紹介する。
記事【プロジェクトの1年目には、既存の住民森林管理組織に対し、養蜂(ようほう)技術支援を実施した。研修により技術・知識を習得するのはもとより、習得した技術・知識をすぐさま実施へ移すために、最低限必要な資機材を投入する。これが住民森林管理組織の活動の資本となり、管理組織はこれを元に新たな収入機会を得ることになる。資機材にかかる費用の一部は、管理組織が積立てる。その資金をリボルビング・ファンド(回転資金)として管理組織が活用しつつ、持続的な組織運営を目指す。
バンフォラで地域関係者セミナーを開催した際に、ブヌナ村のグループが自分たちの生産したハチミツと、その活動状況を発表した。また、ハチミツ製品の展示や、セミナー参加者には、サンプルを配り、味見をしてもらった。ブヌナ村のハチミツの水分は19.5%?21.5%となかなかの品質である。セミナー開催後、ブヌナ村の発表に触発されてか、養蜂技術研修を実施した他の3つのグループ(ラボラナンバルフォ村、トゥムセニ村、フガングエ村)が次々と自力でハチミツを収穫した。そして、ブヌナ村のグループのハチミツは、バンフォラという都市部の消費地を控えているおかげか、既に売り切れた。プロジェクト対象地域では、伝統的な養蜂も行われている。巣箱は使わず、草や、粘土から作った筒状の巣を木にかける。ハチミツ収穫の際に火を使用するため、この火の不始末が、乾期の野火の一因にもなっているので、近代養蜂の導入は森林保全にも貢献出来る。】
私もブヌナ村で製造したハチミツをバンフォラの町で買って味わっていた。色が少し黒っぽかったが、味には関係なく、美味しいものだった。
真ん中の黒い色のもがハチミツ。
MIEL DE BUNUNA(ブヌナ産ハチミツ)と書いてある
バオバブ
バオバブ(パンヤ科:熱帯に分布。高さ30mに達し葉は掌状複葉。楕円形の実がなる。)の木は住民が伝統的に利用してきた木で、どこの村にも大木が残っている。日差しを遮り、この下で住民の集会が開かれたりする。また樹皮がロープに使われたり、その実はジュースともなる。
プロジェクトで発行したニュースレター「コモエの森からの恋文(Vol.5、2009年7月)号」に書かれた記事を抜粋要約し、バオバブを紹介する。
記事【バオバブの学名はAdansonia digitata。digitataとは、葉が手の指のように掌状に広がることから名付けられている。
アフリカでバオバブと言えば、自動的に、このA. digitataを指しすが、実は、バオバブが属するAdansonia属には11種類もある。恐らく、サンテグジュペリの「星の王子様」に描かれているバオバブは、このA. digitata。その他、マダガスカルに8種類、オーストラリアに2種類ある。(これは、昔、アフリカとマダガスカルとオーストラリアが陸続きであった証拠?)さて、この木の利用を見るに、まるで天然のコンビニエンスストアかドラッグストアだ。葉は食用、果肉も食用、樹皮からは繊維がとれ、根は薬用や染料になり、ほぼすべての部位がなんらかの用途に利用されている。このため、バオバブは、ブルキナ・ファソばかりではなく、西アフリカの様々な文化とその景観を形作る重要な要素となっている。種子は、油脂分を15%も含んでおり、タンパク質も豊富。
プロジェクトの森林管理技術研修の一環として実施している苗木生産研修を受講した村でも、バオバブの苗木が生産されている。ジャンガ村で成育中のバオバブ苗木は成長するよう期待されている。
Pain de singe: バオバブの実のことをフランス語では「サルのパン」と呼んでいる。硬い殻の中には、白い乾燥した果肉が見える。甘酸っぱくてまるでラムネで、Vitamin Cが豊富。
バオバブの樹皮は、主には繊維として利用され、ロープ等に加工される。薬、時には家畜飼料としても利用される。
花の後にはラグビーボールのような実がぶら下がる。この中に、白い果実と種子がぎっしりつまっている。
バオバブの花は下向きに咲き、コウモリが花粉を運ぶコウモリ媒花。(コウモリだけではないようであるが)】
ジャンガ村の巨大バオバブ。合体木と思われる
ジャンンガ村。別の巨大バオバブ
ジャンガ村には巨大なバオバブが数本ある
ジャンガ村のバオバブの葉。掌状である
私はブルキナよりもセネガルでの仕事の期間の方がずっと長く、セネガルでもバオバブを良くみた。不思議に思ったのは、ロープを取るために樹皮をはがすのだが、その時形成層(植物の成長組織)まで剥がしてしまうのではないかと思われ、何故バオバブが枯れないのか不思議である。それに大木は良くみかけるのだが、小さいバオバブをほとんど見かけず、大きさに連続性のないことである。更新木を見かけないことである。そして感心したのは、雨期前のまだ雨が降り始める前から新芽を出し始めるのである。空中の湿度を感じ取るのに違いない。
12月の駒ヶ岳
【森林紀行No.3 ブルキナ・ファソ編】 No.11
様々な産物(1)(スンバラ、ドゥリバラ)
スンバラ
スンバラとは西アフリカの料理には欠かすことのできない発酵食品の調味料である。フランス語では「ネレ」と呼ばれるマメ科の樹木の種子から製造する。ネレの木は樹高が10?15m(最大では20m程度)までに成長し、「シアバターの木」と同様、その有用性から農地の中に伐採されずに残されている。前回紹介した「シアバターの木」とこの「ネレ」がこの地域では、点々と農地の中に存在している。これがこの地域の独特の景観を形成している。
「スンバラ」は、納豆菌と同じ仲間の菌を発酵させた食品のため、独特の香りがし、酸っぱく、これを用いるのが、西アフリカ料理の特徴である。
種子が取れるのは4月?6月で、収穫後は軒に干してから、種子と果肉を採取する。残った莢は、粉末にし、水に溶かして防水材として壁に塗ったりするということである。スンバラは村の女性の貴重な現金収入源ともなっていて、プロジェクトでは森林管理グループの生計向上支援の一つとして、スンバラの加工方法の改善指導を行っていた。
ネレの木の莢
莢の中身。黄色の果肉の中に種子がある
果肉の中から種子を取り出し、乾燥させてから発酵させる
出来上がった「スンバラ」
独特の風味がある
ドゥリバラ
ドゥリバラとはワタモドキ科(被子植物、2属20種ほどの木本からなり、世界の熱帯(東南アジア島嶼部を除く)に分布し、特に乾燥地に多い)の樹木で、この根が抗マラリア薬とされている。
ドゥリバラの花
「ドゥリバラ」は、鬱蒼とした森の奥深くというよりも、休耕地のような比較的明るい場所によく生えている。樹高は、大きくても1.5mの低木で、草むらに隠れてしまうこともある。雨期の終わり頃から乾期の初め(バンフォラでは10?11月)に、鮮やかな黄金色の花をその枝条の頂きにつけるので、とても目立つ。イチジクの実のような褐色で楕円形の実をつける。実が熟すと白い毛にくるまれた黒い粒の種子が出てくる。
この植物は、根が薬用となり、抗黄疸・抗マラリア性に優れているということである。また、肝臓や胆嚢疾患、特に黄疸などに対して、煎じ薬として伝統的に利用されている。
プロジェクトでは、このような薬用植物を活用すべく、森林管理住民組織向けに薬用植物活用研修を行っていた。森林管理住民組織のメンバーは薬用植物の採取・乾燥・保存及び栽培の知識・技術の取得を目的とした研修を受ける。その研修を担当していたのは、技術提携をしていたラボラトワール・フィトフラである。この研究所のダクヨ博士は、重度のマラリアではない場合には、抗マラリア薬であるクロロキンの代用薬として十分な効果が得られるとしている。
技術研修を受けた住民は、資源を枯渇させない適切な方法でドゥリバラの根を採集し、乾燥処理を行った後、フィトフラへ納入し、収入を得ており、非常に高い収益を上げている。
ラボラトワール・フィトフラは薬用植物を利用した製品の製造・販売をはじめとして、薬用植物治療や農産物加工部門で事業を展開している中小企業である。同社は西アフリカのブルキナ・ファソ南西部のバンフォラ市を拠点とし、20数年前から60余りの製品を製造し、ブルキナ・ファソ全土で販売している他、海外にも輸出している
薬用植物を利用した薬品の製造には原料の調達ルートが必要であることから、ラボラトワール・フィトフラは薬用植物生産者組合を設立し、カスカード州内の200名以上の生産者が組合に加入している。そしてプロジェクトとの連携により、森林管理住民組織も調達先の一つとなったのである。
木の根を削る
削った根を乾燥させる。ウラテンガ村
フィトフラ製薬会社。薬用植物の苗木も作っている。
今回の記事はプロジェクトが発行したニュースレター「コモエの森からの恋文」を参考にし、一部を引用し編集した。
つづく